こんにちは→さようなら

住んでいるアパートの向かいには、ちいさな戸建の家がある。そこにはおそらくおじいちゃんがひとりで暮らしていて、よく窓辺にいて、庭の草木を弄り、たまに煙草を吹かしている。
見かけるたびに挨拶をする。柔和に笑うおじいちゃんで、庭を挟んで会釈をしあう。その家の勝手口はちょうどわたしの部屋のドアの正面なので、そこで会えばこんにちはと言いあう。
 
今はごく元気そうだが、勝手にちょっと心配している。この時期、はっきり言って窓辺で涼むなんてことが可能な気温ではない。エアコンを着けているのだろうか。扇風機を回しているのだろうか。曇りガラスの向こうのことを、わたしは何も知らない。彼とこれ以上の関係になることはたぶんないだろう。でも心配だし、だからこそ心配でもある。
 
さっきも庭を挟んで会釈をしあった。その庭はあまり広くはないが、暑いですねと声をかけるにはわたしと彼は遠い。
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