わたしは暫く海に行かなかった。それどころか学校も休んでいた。部屋から出たくなくて、誰にも会いたくなかった。
彼が何者なのか、わたしにはまるでわからなかった。彼は男を沈めたの? 彼は誰を愛しているの? どうして、彼はそんなに怒られているの?
わたしは彼を恐れたいのか詰りたいのか庇いたいのかわからなかった。すくなくとも、彼がわたしにやさしかったことだけは、わたしがこの目で見た真実だった。わたしが縋れるのは、この真実だけだ。
ふと今更のように気づいた。彼は、水底の友人にメッセージボトルを出しているわけではないのだ。それとはまた別の、きっとまだ生きているたいせつな人に宛てているのだ。
それはとても悲しい。それは、わかる。
わたしも、彼に手紙を書こうと思った。
※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます